公開日:2024年08月16日

更新日:2024年10月24日

淋病とはどんな病気?症状や感染原因、治療方法まで解説

・淋病はクラミジアと並んで国内で特に感染報告頻度が高い性病
・無症状や症状を自覚しない場合もあり、特に女性では症状を自覚しにくい傾向がある
・感染頻度が高く、感染を放置したままにすると不妊症のリスクもある

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淋病とはどんな病気?

淋菌感染症(以下「淋病」という)は、淋菌による感染症で、クラミジア感染症(以下「クラミジア」という)と並んで特に頻度の高い性感染症(以下「性病」という)です。

淋病は一度感染し治療しても、何度でも再感染するリスクもあるので、注意が必要です。

淋病は20代に多く、特に女性は自覚症状に乏しい

感染者は20代の年齢層に最も多くなっています。淋病の報告数においては女性の数が男性の数より極端に少なくなっていますが、女性は自覚症状に乏しいため、医療機関を受診する機会が少ないことも要因のひとつと考えられています。

そのため、特に女性においては自覚症状がなくても、心当たりがある場合は定期的な検査と、感染していた場合は治療も重要になります。

2000年以降、淋菌の感染者数は増加傾向

最近では淋菌への感染があると、HIVに感染しやすくなると疫学的研究により報告されており、そのような観点からも検査による早期発見が重要です。

出典:国立感染症研究所

淋病の主な症状は?


出典:国立感染症研究所 ※数値を当院でグラフにしたため、無断転載禁止

男性と女性それぞれで見られる主な症状は以下になります。

男性:排尿痛、尿道から膿
女性:おりものの増量、おりものの変化

性器だけでなく、咽頭や直腸からの感染もあるため、心当たりがある場合は同時に検査することが重要になります。

男性の淋病の主な症状

男性は、尿道に淋菌が感染すると2〜9日の潜伏期を経て、初期症状として通常膿性の分泌物が出現し、排尿時に痛みが出るようになります。

主な症状として、最近では無症状や症状を自覚しない場合もあります。通常、淋病での分泌物は多量、黄白色、膿性であることが多く、下着への付着や陰茎の圧出によって分泌物を確認することができます。

しかし最近では、男性の場合でも症状が典型的ではなく、分泌物が少なかったり、場合によっては無症状のこともあると報告されています。

また、前立腺炎や膀胱炎と勘違いされる場合も多く、症状が弱い方では残尿感や頻尿が続いて前立腺炎や膀胱炎が疑われる際の原因が淋病であることがあります。自然治癒せず淋病かどうかは検査でないと判別が難しいことから、前立腺炎や膀胱炎を繰り返す場合は注意が必要です。

淋病を放置すると精巣上体炎など重症例を引き起こす可能性もあります。精巣上体炎は、はじめは片側性で、進行すると両側性となり、陰嚢内容の腫大、疼痛が特徴です。多くは発熱を伴い、採血で白血球の増多等の炎症所見が認められます。

そして、治癒してもしなくても後遺症の原因になることがあります。男性不妊症の原因となることもあるので、早期の治療により後遺症を残さないことが重要です。

女性の淋病の主な症状

女性は、2〜9日の潜伏期を経て、初期症状として帯下の増殖や不正出血が一般的な症状となります。しかし、女性では男性より自覚症状に乏しかったり無症状のこともあるため、自覚されないまま経過することが多くなります。

そのため、男性と比較して医療機関を受診しない傾向があり、受診しても本人から感染を疑う正確な情報を得られず、結果的に女性の報告数が少なくなっています。

主な症状ですが、淋病において特に女性は無症状や症状を自覚しない場合も多いですが、子宮の内腔を通過し卵管へと炎症が波及していくことがあります。後述のクラミジアとともに、骨盤炎症性疾患、卵管不妊症、子宮外妊娠、慢性骨盤痛、不妊症の原因にもなります。

一般的に女性は感染しても無症状や症状を自覚しない場合も多く、無治療のまま男性の淋病の主な感染源となっています。

また、クラミジアやマイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症(以下「マイコプラズマ・ウレアプラズマ」という)と同様に残尿感や頻尿が続いて膀胱炎のような症状を繰り返す原因が淋病であることもあります。女性の淋病は症状から淋病かクラミジアかを疑うには区別が難しく、自然治癒はしないため膀胱炎を繰り返す場合は注意が必要です。

咽頭や直腸への淋病による症状

咽頭や直腸における淋菌の感染は、症状が自覚されないことが多くなるため、これらの部位も感染源となっています。そのため、心当たりがある場合は性器だけでなく咽頭や直腸の検査も同時に実施することが重要です。

  • 咽頭:のどの痛み、発熱
  • 直腸:肛門の痛み、肛門からの排膿

クラミジアやマイコプラズマ・ウレアプラズマと症状が似ており、咽頭や直腸への感染は性器への感染と同様に他者への感染源となり得ます。そして、淋病は治癒した後にも、パートナーが感染していると何度も再感染します。

播種性淋菌感染症(DGI)による症状

血液中に淋菌が存在する全身性の淋病です。淋病になった人の1%未満に発生するといわれ、主に女性に見られます。

発生すると以下の症状が見受けられます。

  • 発熱
  • 倦怠感
  • 移動性の疼痛
  • 移動性の多発する関節痛
  • 皮膚の膿疱性病変

上記以外にもまれに、心膜炎、心内膜炎、髄膜炎、肝周囲炎の症状が見られることもあります。

淋病の主な感染経路・原因

主な感染経路は性行為、またはそれに準ずる行為となります。淋菌は高温・低温ともに弱く、患者の粘膜から離れると数時間で感染性を失います。また、日光・乾燥・温度の変化や消毒剤で簡単に死滅する特徴があります。

1回の性行為による感染率は性病の中でも強い

淋菌は前述した通り、簡単に死滅する特徴があります。そのため、性交や性交類似行為以外で淋菌に感染することは稀と考えられ、性病として人から人へ感染するのが主な感染経路となります。

しかし、1回の性行為による感染伝達率は性病の中でも高いとされ、感染力は強いと考えられています。

心当たりがない感染

淋病においても症状を自覚されなかったり、無症状の場合があります。そのため、気づかないうちに他者への感染源となったり、感染が判明した際に感染経路が不明な場合もあります。

また、症状があっても感染に心当たりがない場合があります。パートナーが無症状や症状を自覚しない感染者がいる場合、何度でも再感染します。

性病の発症で浮気を疑われた…心当たりのない性病への感染について

性器だけでなく咽頭や直腸からも感染

性器以外の咽頭や直腸における淋菌の感染は、症状が自覚されないことが多いです。性器への淋病患者のうち10〜30%に、咽頭からも淋菌が検出されることも少なくありません。

また、肛門性交により、直腸への淋菌の感染もあります。咽頭と同様に直腸における淋菌の感染も症状が自覚されないか、乏しい場合が多くなるため、感染を疑わず検査が実施されないことも多いです。性器以外に、これらの部位も他者への感染源となっています。

クラミジアなど他の性病との重複感染にも注意

淋病はクラミジアやマイコプラズマ・ウレアプラズマと重複して感染するケースもあります。クラミジアにおいては、男性で約15〜25%、女性では約35〜50%が重複感染という報告もあります。

しかし、男女ともに淋病の症状が目立つため、クラミジアやマイコプラズマ・ウレアプラズマの検査が行われずに見逃される可能性が高いです。

淋病を放置するとどうなる?

淋病の感染に気が付かずに放置すると、男性は前立腺に炎症を起こし、尿道炎の症状が悪化することにより排尿が困難になったり精巣上体炎を引き起こすことがあります。精巣上体炎は、精子の通り道となっている精巣上体が精巣よりも大きく膨張し、精子の通り道が塞がれ男性不妊症の原因になります。

女性は子宮から卵管や卵巣へと感染し、卵管炎や卵巣炎を発症し子宮頚管炎となり不妊症の原因になる可能性があります。また、妊娠中に感染していると出産時に胎児が産道を通る際に感染するリスクもあります。

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淋病を予防するためには?

淋病は主に、性行為やそれに準ずる行為によって目や咽頭、性器、肛門などの粘膜へ接触することで感染します。オーラルセックスを含む性行為を行う際にコンドームを正しく着用することで感染のリスクを下げることに繋がります。

また、自分が淋病に感染していることがわかった場合は、相手にも性病の検査・治療を受けてもらうことが重要です。未治療や未治癒のままだとお互いで感染してしまうため、一緒に検査や治療を受けることが大切です。

予防法はありますが、予防よりも早期検査による感染の確認や治療の方が重要であり、あくまで予防は対処する方法であって解決策にならないことを理解しておくことが必要です。予防しているから大丈夫というのは危険で、心配なら検査・治療を受けることが性病において最も重要です。

まとめ

今回は「淋病」について解説しました。

  • クラミジアと並んで報告数の多い特に頻度の高い性病
  • 20代の感染者が多く、2000年代以降増加傾向にある
  • 男女ともに無症状や症状を自覚しない場合もある
  • 1回の性行為による感染率は性病の中でも高いとされている
  • 他の性病との重複感染もあり、複数の性病検査が必要
  • 男女ともに放置すると不妊症になる可能性がある

もし、性病へ感染する可能性のある行為に心当たりがあるかもしれないと、少しでも感じた方は、当クリニックでも検査を受けることができますので、お気軽にご相談ください。

ノワール大宮
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ノワール大宮クリニック 院長:成田学史

執筆者:成田 学史
ノワール大宮クリニック院長(医師)
2014年(平成26年)北海道大学医学部医学科卒業
日本性感染症学会 会員
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